「Ping値」とは、インターネット回線の応答速度を示す指標です。
通信速度とは異なる指標で、データがデバイスとサーバー間をどれくらいの時間をかけて往復するのかを示しています。
WebサイトやSNSを閲覧する際は、あまり気にしなくてよい指標ですが、リアルタイム性が求められるオンラインゲームやライブ配信においては、Ping値が高いと「ラグ」を感じることになります。
Ping値を低くすることは、快適なネット環境に直結します。
この記事では、Ping値の基礎知識やゲームタイトル別の目安となるPing値、Ping値の改善方法を解説します。
また、元プロゲーマー・ちょも氏に、どのようにしてプロレベルのゲーム環境を構築しているのか、そのテクニックや使用機器についてうかがいました。
「Ping値」とはデータの往復速度を示す指標
Ping値(ぴんぐち、ぴんち)とは、データがゲーム機やPC、スマホといった「デバイス」と「サーバー」の往復にどれくらいの時間がかかるのかを示した指標です。
たとえばオンラインゲームをプレイしている際、ゲームパッドを操作してから画面が反応するまでの速度が速いときは、Ping値が低い状態です。
逆にPing値が高いと、操作してから画面が反応するまでに時間がかかります。
いわゆる「ラグい(遅延が発生している)」と言われるのは、Ping値が高い状態です。
Ping値はms(ミリ秒、millisecond)という単位で表されます。
ミリ秒=1秒の1000分の1を表すので、Ping値が100msであれば、1秒の10分の1の遅延を感じるということ。
これはヒトの瞬きと同じくらいの長さです。
一般的に、Ping値が50msを超えるとラグを感じるとされています。
100msになると、リアルタイム性が重視されるゲームやオンライン会議では遅延が目立つように。
150ms以上になると明確にラグを感じ、ゲームであれば操作の遅れ、オンライン会議であれば音声や映像の遅延が気になる状態になります。
Ping値と関連したキーワードで「ジッター値」があります。
ジッター値は、データが届く時間を示す指標です。
大まかに言えば、一定時間内に計測したPing値の最大値と最小値の差がジッター値になります。
ジッター値が高いということは、データが届く時間が一定ではないということ。
つまり、安定してデータが届かないため、オンラインゲームであれば画像がカクついたり、止まったりしてしまいます。
リアルタイム性が求められるオンラインゲーム、オンライン会議、ライブ配信などにおいては、通信速度以外に「Ping値」や「ジッター値」が影響すると覚えておきましょう。
Ping値の確認方法
Ping値を確認する方法は簡単です。
PCやスマホであれば、回線速度を計測するWebサイト『USENスピードテスト』や『SPEEDTEST』で確認できます。
ゲームによっては、プレイ中の画面で現在のPing値が表示されることもあります。
なお、全国各地で計測された回線速度やPing値を集計するWebサイト『みんなのネット回線速度(みんそく)』では、自分が使用している回線のパフォーマンスを確認できます。
たとえばゲーマーに人気の回線に注目すると、回線速度やPing値は次の通り。
多くの方が10~20ms程度のPing値でオンラインゲームをプレイしていることがわかります。
回線名 | Ping値 | 下り速度 | 上り速度 |
---|---|---|---|
GameWith光 | 15.4ms | 570.7Mbps | 634.8Mbps |
hi-hoひかり with games |
21.7ms | 432.5Mbps | 415.1Mbps |
NURO光 | 11.5ms | 642.0Mbps | 639.0Mbps |
コミュファ光 ゲーミングカスタム |
11.1ms | 1340.9Mbps | 1497.6Mbps |
※データは『みんそく』より。
【ゲーム別】快適にプレイできるPing値の目安
快適にプレイできる目安となるPing値は、ゲームのジャンルやタイトルによって異なります。
瞬発性が求められるFPSや格闘系のゲームの場合、Ping値が15ms以下だとストレスを感じにくいでしょう。
一方、ターン制のカードゲームなどの場合は30ms以上のPing値でも許容されます。
ゲーム中の「ラグ」にストレスを感じている方は、ゲームで求められるPing値に対して、現状のPing値が高いのかもしれません。
ゲームジャンルとタイトルごとの目安のPing値は次の通りです。
現在プレイしているゲームではどれくらいのPing値を目指すべきか、ぜひ確認してみてください。
元プロゲーマー・ちょも氏から学ぶ快適なゲーム環境づくり
『Wi-Fi TIMES』では『CoD WW2』国内大会にて優勝経験のある元プロゲーマーのちょも氏にインタビューを実施し、プロレベルのゲーム環境を構築するための考え方や使用機器についてうかがいました。
- ちょも氏 プロフィール
-
元プロゲーマー。
14歳の頃、iPod touch版『モダンコンバット2』をプレイしたことをきっかけにFPSの世界へ。
親に猛反対されながらもプロゲーマーを目指し、『Call of Duty』をやり込む。
自ら支援者を探し求めて上京し、プロゲームチーム「XIA」に所属。
晴れてプロゲーマーとしての生活がスタートする。
『CoD WW2』国内大会にて複数優勝、ラスベガスで行われた世界大会にも2回参戦。
プロeSportsチーム「BBV Tokyo」での活動などを経て、現在はストリーマーとして活躍中。■X :@XIA_Kudryavka
■YouTube : @XIA_Kudryavka/
PC | FRGH Serues |
---|---|
モニター | Dell G2524H |
ルーター | Archer AX5400 |
コントローラー | PS4ではSCUFコントローラー、CODMではiPad Pro 13incモデルを使用 |
プロバイダ | GMOとくとくBB光 |
接続方法 (PC・ルーター間) |
有線 |
下り速度 | 300Mbps |
---|---|
上り速度 | 250Mbps |
Ping値 | 4ms |
ジッター値 | 0.6ms |
Q.快適なゲーム環境を構築する際、よくある勘違いポイントを教えてください。
実家暮らしの方に多いのですが、インターネット回線は契約するものによって速度に規定があるので、高価な速度の出せるルーターを買っても意味がありません。
Q.Ping値「30msと15ms」の違いは体感できるものでしょうか?また、プロゲーマーであれば「15msと5ms」の差も意識されるのでしょうか?
30~15msですと、それなりに違いは感じます。
15msから5msのレベルになると、ほぼ大差はない気がします。
実家に住んでるときは40msぐらいでしたが、ゲーミングハウスの時は5msほどだったので圧倒的な違いを感じました。
Q.ゲームをプレイする上では「ジッター値」も気にすべきでしょうか?
ジッター値に関しては下振れすることがあるという印象です。
皆さん回線速度ばかり気にしがちですが、ジッター値が高いとどれだけ回線速度が速くてもどうしようもないラグに襲われます。
回線速度もそうですが、ジッター値はなおのこと気を付けたいところだと思ってます。
- ジッター値とは
-
動画や音が届く時間のズレのこと。
このズレが大きい(ジッター値が高い)と、映像や音声が途切れる原因となる。
ジッター値が低いほど通信が安定し、より快適にゲームをプレイできる。
Q.WiMAXなどのネット環境でストレスなくゲームを楽しむのは難しいものでしょうか?
WiMAXや簡易的なWi-Fiでは、初心者の頃は気付かなくても、遊べば遊ぶほど回線の差で生まれる敗北にストレスを感じ始めると思うので、そこそこゲームで遊びたいって人は光回線一択かなと思います!
Q.光回線では「10〜20Gbpsプラン」や「ゲーム専用プラン」が増えています。おすすめがあれば教えてください。
配信者とかでなければ、僕は1ギガプランで十分だと思います。
配信者には10ギガプランをおすすめしますね。
――ちょもさん、ありがとうございました。
快適なプレイ環境を整えるためには、回線の種類はやはり「光回線」がベースとなるようです。
いくら高性能ルーターを使ったとしても、そもそもの回線がWiMAXなどのモバイル回線であれば、規定以上の速度やPing値にはなりません。
Ping値とあわせてジッター値も意識しながら、ぜひ快適な環境を整えていきましょう。
Ping値を改善するなら、回線の見直しから
Ping値を改善する方法としては、デバイスとルーター間を有線で接続する、ルーターの設置場所を調整するなどの方法がありますが、影響が大きいものとしては「回線の種類を見直すこと」が挙げられます。
回線の種類には「固定回線(光回線)」と「モバイル回線(ホームルーター・ポケット型Wi-Fi)」の2つがありますが、もっとも低いPing値を期待できるのは光回線です。
光回線は物理的なケーブルを利用しているため、無線通信を利用するモバイル回線よりも遅延が少ないという特徴があります。
そのため、モバイル回線よりも光回線のほうがPing値が低くなるのです。
ホームルーターやポケット型Wi-Fiでもゲームをプレイできますが、FPSや格闘系などの低いPing値が求められるゲームの場合、ラグを感じる可能性が高くなります。
※グラフはイメージです。
『Wi-Fi TIMES』編集部では、光回線とポケット型Wi-Fiの2種類の回線を使い、Ping値などの実測値がどれくらい変わるのか検証してみました。
- 検証概要
-
- 場所:福岡県福岡市中央区
- 日時:2024年11月7日
- 検証方法:PC(ThinkPad L13)を光回線・ポケット型Wi-Fiに繋ぎ、回線速度・Ping値・ジッター値を計測
- 接続方法:無線
- 接続端末:
光回線:NURO光 2ギガプラン
ポケット型Wi-Fi:Speed Wi-Fi 5G X12 - 接続方法:無線
- 測定ツール:USENスピードテスト
Ping値 | ジッター値 | 下り速度 | 上り速度 | |
---|---|---|---|---|
光回線 | 21.2ms | 1.7ms | 217.9Mbps | 224.9Mbps |
ポケット型Wi-Fi | 34.9ms | 19.5ms | 130.0Mbps | 22.8Mbps |
※10:00~10:30の間に4回ずつ測定した平均値を掲載。
Ping値はポケット型Wi-Fiのほうが13msほど高いという結果でした。
また、ジッター値に至っては、光回線が1ms台を叩き出したのに対し、ポケット型Wi-Fiは19.5msという結果になりました。
この結果より、ゲームをプレイする際はやはりポケット型Wi-Fiのほうがラグを感じやすいと言えるでしょう。
ポケット型Wi-Fiやホームルーターなどでオンラインゲームをプレイしている方は、光回線に乗り換えることでPing値などが改善され、より快適にプレイできる可能性が高くなります。
回線を味方につけ、ぜひ快適なネット環境を構築しましょう。